望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
予想よりもずっと話が弾んであっという間に一時間が過ぎていた。

「少し失礼します」

美紅は席を立ち、隣のテーブルに移動した。

話したそうな視線が送られていることに気付いたら、なるべく声をかけた方がいいと、川田にアドバイスされていたからだ。

数人と話したけれど、以前のような軽蔑されているような居たたまれなさは感じず、無事はじめての交流会は終了した。


川田や明日香と一緒にお客様を見送った後、後片付けに談話室に戻った美紅は、どさりとソファに座り込んだ。

「問題なく終わって、よかった」

平気なふりをしていたけれど、実際はものすごく緊張していた。

百戦錬磨のような貫禄がある女性の中では萎縮しないでいるので精一杯だというのに、本家の人間として、しっかりしないといけないのはプレッシャーが大きい。

それでも、なんとか乗り切った。

「お疲れさまでした。無事終わってよかったです」

川田に声を駆けられて、美紅は笑顔で頷いた。

「ありがとうございます。なんとかなってほっとしています」

「何事も一度経験することで、二度目は格段に上達します。次はきっと平然と過ごせますよ」

「そうだったらいいんですけど」
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