望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
あの中で顔色を変えずに堂々としている自分は、まだ想像できない。

「この色のワンピースにしてよかったですね。似合っているだけでなく、誰とも被っていなかったので」

「うん。明日香さんに勧められたから着てみたけど、意外と違和感なく着られました。新しい発見になってよかった」

「肌のトーンに合ってるから顔色がよく見える効果があるんですよね。皆さん美紅さんを見て、感心していた様子でしたよ。笛吹家の人たちは、ものすごい顔をしてましたけど。あれは嫉妬ですね」

明日香は最後は呆れたように呟くと、川田が窘めていた。

珍しくしゅんとする明日香。

「あ、あの、川田さん、明日香さんは私に気を遣ってくれて言っただけで……」

美紅がふたりの間でオロオロしていると、談話室のドアがノックもなしに開いた。

「……百合華さん?」

ドアの前で立ち止まり美紅を見つめているのは、鮮やかなローズレッドのワンピースを着た百合華だった。

つい先ほど、伯母と一緒の車に乗り込んだところを見たというのに、なぜここに居るのだろう。

「忘れ物をしたから戻って来たの」

「あ、そうなんですね。直ぐに探します。何を忘れたのでしょうか?」

美紅は立ち上がり、足早に百合華の元に向かう。
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