望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「あなたに言い忘れたことがあったのよ!」
いきなりきつい口調で言われ、美紅は驚き立ち止まった。
「……どのようなことですか?」
恐らく文句を言いたいのだろうが、伯母と別行動をしてまで言いにくる程の内容が思い当たらなかった。
「あんたは……!」
「百合華様、そのような言い方は美紅様に対して失礼になります。どうか控えて頂けますようお願いいたします」
今にも掴みかかりそうな勢いの百合華から美紅を庇おうとしているのか、川田が前に出て来た。
百合華は不愉快そうに顔をしかめたけれど、ここが本家であることを思い出したのか、怒りを治めるように深く息を吐いた。
「……美紅は態度を改めるべきだわ。本家に嫁いだからいい気になっているみたいだけど、私たちを蔑ろにしたら、その地位を失うわよ?」
「私はいい気になんてなっていませんし、百合華さんを蔑ろにしているつもりもありません」
百合華に反論するのは、美紅にとって勇気がいることだ。
今にも体が震えそうになっているほどだ。
しかし百合華の目からは、よほど生意気に映ったようで、彼女は再び激怒する。