望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「ようやく分かったみたいね。史輝さんと美紅じゃ釣り合いが取れてないのよ。誰に聞いてもそう言うわ」

美紅が反論を辞めたからか、百合華が勢いづいてしまった。

「史輝さんの手を煩わせないで、さっさと自分から身を引きなさいよ!」

百合華が脅すように一歩足を踏み出してくる。

そのとき、思いがけない声がした。

「それが百合華の本性か」

「えっ?」

美紅と百合華が同時に声を上げて、声の方に顔を向ける。

そこには険しい顔をした史輝が佇んでいた。

「し、史輝さん? どうしてここに……」

百合華がざっと青ざめる。彼がここに現れたのは、完全に計算外だったのだろう。

「大きな声が聞こえるから何事かと思って来てみたが、驚いたよ。まさか百合華が妻に暴言を吐くとはね」

「ち、違う! 違うの……」

百合華は美紅や笛吹家の使用人に対してはかなりきつい態度を取るが、外では愛想がよく優しい女性と印象付けている。恐らく史輝の前でも攻撃的な面を隠していただろう。

史輝が失望したような目で百合華を見つめる。
< 117 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop