望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「何が違うんだ? さっさと身を引けと言っていたが、なぜ俺の妻がそんなことを言われなくてはならないんだ?」

「それは……だって、美紅じゃ史輝さんの妻なんて務まらないもの。なんの教育も受けてないのよ? 高等部を卒業した後はずっとうちで掃除をしてたんだから」

百合華の言葉が琴線に触れたかのように、史輝の顔色がさっと変わった。

「お前たち笛吹家の人間がそれを言うのか」

「史輝さん? 私にお前だなんて……」

乱暴な言い方をされた経験などないのだろう。百合華が怯んだように後ずさる。

「これまで身内だと思って甘い対応をしていたが、美紅の害になる者を近づける訳にはいかない。今後百合華の本家出入りを禁じる」

「えっ? 待ってそんなの駄目よ!」

百合華が焦ったように叫んだ。

よほど驚愕が大きいのか、恐れていたことなど忘れたように、史輝ににじり寄る。

けれどその態度は当然と言えた。

本家の出入り禁止を受けてしまえば、京極グループ内での立場はかなり悪くなる。

笛吹家で使用人をしていた頃の美紅がまさにその状態で、誰からも見向きされなかったのだ。
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