望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
顔を見に寄ったと言っているが、本当は美紅がまた落ち込んでいないか気にして来てくれたのではないだろうか。

史輝が少し困ったように微笑んだ。

「……ありがとう。いつも心配かけてばかりでごめんなさい」

「いいんだ。来てよかったよ。まさか百合華があんな態度を取るとはな」

思い出しているのか史輝が眉を寄せる。

ふたり並んでソファに腰を下ろす。成り行きを見守っていた川田と百合華は、いつの間にか部屋を出て行っていた。

「百合華は前から美紅に対してあんな態度だったのか?」

史輝の問いに、美紅は頷いた。

「私は百合華さんに嫌われているから」

「分からないな。本家に嫁いでからならまだ理解出来るが、笛吹家に居た頃は美紅を嫌う理由がないだろう」

史輝が言うのはもっともだし、多くの人が同じ感想を持つだろう。今の美紅の立場は嫉妬や妬みの対象にされても不思議はないが、笛吹家に居る頃は、百合華が意識するような存在ではなかったから。

「家族の暮らしの中に、突然私が入り込んで来たから不快なんだと思う」
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