望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚～財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない～

「元をただすと、叔母が生まれた頃まで遡る話だ。俺の父、現京極グループ総帥は養子で――」

　史輝は美紅の知らなかった、京極家の事情を打ち明けてくれた。

　美紅は義父が養子だと知らなかったから驚いた。親世代になると事実を知っている者が多いが、義父を慮って口にしないようになったとのこと。

　話を聞き終えると美紅は、はあと息を吐いた。

　想像以上に込み入った過去の話は、衝撃的で気持ちが重くなるものだった。

「私の母は令華伯母様との関係に悩んで家を出たのかな……」

　独り言に近い発言だったが、史輝は痛ましげな顔になった。

「それは分からないが、叔母が嫁いで来て居心地が悪くなったのは確かだと思う」

「お母さんは、令華伯母様にも臆せず、間違っていると注意していたんでしょう？　私の記憶の中の母は明るくて優しくて、ちょっとどじなところがある人で厳しさは感じなかったから、なんだか想像できない」

「そうだな。とても優しい人だった」

「お母さんは定期的に史輝のお母様を訪ねていたけれど、いつも何を話していたのかな。私には聞かせたくなかったようだけど、史輝くんは知ってる？」

　当時美紅は幼くて、母の訪問の理由を深く考えたことはなかった。