望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
 特別なことはないが、日々は楽しく、不満はなかった。

 母だっていつも笑っていたし、幸せそうに見えたのに。

「それに、関係が悪かった令華伯母様がいる実家に戻ろうなんて、普通は考えないでしょう?」

「そうだな。だがその令華さんを追い出そうと計画していたとしたら?」

「えっ?」

 美紅は大きく目を見開いた。

「まさか……あのお母さんがそんな大それたことを考える訳がない」

 優しかった母と怖ろしい令華。そんなふたりが争ったら令華に軍配が上がるのは目に見えている。

「ひとりでは無理だが、幼い頃からの親友だった俺の母と協力していたとしたら可能かもしれない」

「でも……自分が実家に戻りたいからと言って兄嫁を追い出すなんて……お母さんがそんなことを考えていたなんて信じたくない」

「そうだな。私怨で追放しようとしたのではないと思う。俺たちが知らない事情がきっとある」

「……もし母が亡くならなかったら、実行していたのかな?」

「そうかもしれない。俺の父なら当時の事情を知っているかもしれないが、簡単には話さないだろうな」

 史輝が憂鬱そうに顔を歪めた。

 そう言えば彼と義父が親しく接している姿を見た覚えがない。
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