望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
(上品で綺麗な人……)

 流石は社長令嬢だと感心する。

 史輝は特に何も感じなかったのか、挨拶後はすぐに木藤社長との会話に戻った。新たに何人かが挨拶に来たので、しばらく終わらないだろう。

「史輝さんが結婚されたと知り大変驚きました。婚約者はいないと聞いていましたので」

 彼女は立ち去らず、美紅に話しかけてきた。美紅は「はい」と微笑み答える。

「まだ内々での結婚披露しかしていないものですから、他の方にも驚かれました」

 突然結婚が決まった経緯は、外向きには伏せている。

「本当に。ショックを受けた女性はどれほどいたでしょうか。実をいうと私もそのひとりです」

 答え辛い内容のときは、微笑んで流す。そうすれば相手に気が進まない話題だと察して貰えるはずだった。

「京極家は昔から一族内で結婚をしてきたと聞きました。美紅さんもそうなんですか?」

 彼女は気付かないのか、更に質問を続けようとする。

「ええ。分家の笛吹家の出身です」

 黙っていてもすぐにばれることなので、正直に答えた。

「笛吹家と言うと、京極建設の……あら? でもあの家の令嬢は百合華さんではなかったかしら?」

 あまり聞きたくない名前が出て来て、少し気が重くなった。

 先ほどから初対面にしては踏み込んだ質問が続いているし、そろそろ会話を終えたい。
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