望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚～財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない～
（でも主催者の令嬢である彼女を蔑ろにはできないし）

「私は笛吹家当主の娘ではなく姪なんです」

　内心溜息を吐きながら返事をする。

「ああ、百合華さんの従妹になるんですね。では美紅さんのお父様は？」

　ドクンと心臓が不快に脈打った。躊躇っていると、史輝が素早く美紅の前に出る。

「失礼。知人に挨拶をするので、そろそろ妻を解放してもらいたい」

「あ……はい、引き留めてしまい申し訳ありません」

　美紅には遠慮がなかった彼女だが、史輝にはそうはいかないようだ。

　素直に引き下がり、こちらを気にする素振りを見せながらも、会場内を移動していった。

「大丈夫か？」

　史輝が耳元で心配そうに囁いた。

「うん、大丈夫。父の話が出たから驚いてしまったんだけど、史輝くんがフォローしてくれたから」

「今日の主役の娘だから我慢していたが、無礼な女だ」

　史輝は彼女の言動に苛立っているようだ。

「史輝くんの妻になった私がどんな人間か気になって仕方ないんだと思う」

「あれは知りたがっているというより、美紅の弱点を探しているんだ。次は最低限の対応だけでいい。問題になるようなら俺がフォローする」

「ありがとう。すごく心強い」

　小声で話している間も、周りの視線が集まっているのを感じる。
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