望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「あ……」

 体が傾き倒れそうになりぎゅっと目を瞑る。

「美紅!」

 史輝の緊迫感のある声がしたと思ったら、お腹に腕を回し支えられた。

 恐る恐る目を開くと、地面までの距離が近い。倒れ込むギリギリに史輝によって助けられたようだ。

「美紅、気分が悪いのか?」

「分からない、急に目眩がして」

 心配そうな史輝の声に、頭を押さえながら答える。

「目眩?」

 低い声で呟くと史輝は美紅を抱き上げ、そのまま足早に玄関に向かう。

「お帰りなさいませ」

「すぐに医者を呼んでくれ」

 出迎えにきた使用人にそう言うと、史輝は東館への階段を上がり、真っ直ぐ美紅の部屋に行く。

 ベッドに直行されそうになり、美紅は慌てて彼を止めた。

「待って! ベッドじゃなくてソファに下ろして」

 史輝は納得できない様子ながらも、美紅の希望通りに居間のソファに下ろしてくれた。

「ありがとう……横になったら服がしわくちゃになるから」

「服なんてどうでもいい。大丈夫なのか?」

「うん。車から降りたときふらっとしたけど、今はもう平気だよ」

 あれはなんだったのかと思うくらい、なんともない。
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