望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
史輝がイギリス出張に出てから一週間が過ぎた。
彼は予告通り仕事の合間を縫って毎日連絡をして来てくれる。
美紅は毎日平穏に過ごしているので彼に相談するようなことはないのだけれど、ただおしゃべりするのがとても楽しくて心が弾む。
彼はイギリスの街並みや、食べたものを写真にとって送ってくれた。
美紅はそれを見るのが楽しみになり、うきうきした気持ちで待っている。
「あれ? 美紅さんがスマホを弄っているのって珍しいですね」
部屋でスマホと睨めっこしていると、休憩中の明日香がやって来た。
クッキーとチョコレートが載った皿を手にしているから、おやつの誘いだろう。
美紅は彼女のために、ソファの端により席を空ける。
「写真を撮って史輝くんに送ろうと思って、いろいろ調べてたの」
美紅は結婚するまでスマホを持っていなかった。
特に必要がないから購入しなかったのだが、史輝との連絡用に渡された。
史輝と色違いの最新機種。スマホが欲しいと思ったことはなかったけれど、とても嬉しかった。
と言っても、史輝との連絡用に使っているだけで、充実した機能を全く使いこなしていなかった。
「加工して送りたいんだけど、やり方がよく分からなくて」
同年代の人が聞いたらあり得ないと思われそうだが、明日香は決して美紅に偏見を持たないし、馬鹿にしたりはしないから素直に言える。