望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~

「史輝様も妹ができたようだと仰っていましたよ。ひとりっ子なので嬉しかったのでしょう」

「本当ですか? でも、百合華さんも本家には出入りされていたのでは?」

 妹と言うのなら血が繋がった従妹の百合華の方が相応しい気がする。

「百合華様が本家に出入りするようになったのは、奥様が亡くなられてからです。ですから従兄妹と言っても、幼い頃は交流がありませんでした」

 川田が僅かに顔を曇らせた。

「そうなんですか? でもどうしてなんでしょうか?」

「令華様の意向ではないでしょうか。奥様がいらっしゃった頃は、令華様も本家に立ち寄りませんでしたから」

「そうですか……」

(史輝くんのお母様と令華伯母様は仲が悪かったからかな)

 考え込んでいると、いつの間にか屋敷に着いていた。

「昔の史輝くんの話をしてくれてありがとうございました。今から令華伯母様に連絡しますね」


「はい、お願いいたします」
 川田は綺麗な礼をすると、美紅とは反対方向に歩いて行った。
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