望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「あの別荘は元々私のものになるはずだったのよ。母の遺言で史輝のものになったのだけれど、何かの間違いとしか思えないわ」

「……そうなんですか」

 つまり本来の持ち主である令華に返せと、言いたいのだろうか。

「この場ですぐにお返事はできませんので、夫と相談してから改めてご連絡いたします」

「そう、急いでね」

「はい。ではそろそろ失礼いたします」

 話が途切れたタイミングで美紅は席を立った。

「うちの車で送った方がいいかしら」

「いえ、お気遣いなく。帰りに寄りたいところがありますので」

 客間を出て玄関に向かう。

 一応見送りはしてくれるつもりなのか、伯父たちが後からついてきた。

 そのとき突然目の前がぐにゃりと歪んだ。

(……え?)

 体が傾くのが分かったが、急速に目の前が暗くなる。

「美紅?」

 背後から、伯父の声が聞こえたが、振り返る余裕がない。

 意識が遠のき、ぷつりと途切れた。
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