望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚～財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない～

「助けてくださったことに感謝します。今日はこれで失礼しますが、後日改めて御礼に伺いますので」

「あら、そんなに気にしなくていいのに」

　百合華はなぜか、不気味に感じるくらい上機嫌だ。

（この前会ったときは、私のことが大嫌いだって気持ちを隠そうともせず、イライラしていたのに）

　どうしてこんなに態度が変わったのだろう。

「気にしなくていいよ。君は軽かったから全然大変じゃなかったし」

　眼鏡の男性の方は、第一印象通り軽い態度で、百合華が親しくする相手とはどうしても思えない。

　少なくとも、令華が嫌うタイプだ。

（令華伯母様は、どうして彼の出入りを許しているの？）

　違和感がある。神経質になっているのか、嫌な予感がこみ上げた。

　どちらにしても、一刻も早くこの場から離れたくて、美紅は逃げるように笛吹家を飛び出した。