望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
 帰宅してからも、気分は沈んだままだった。

 体調が急に悪化するなんて予想はできなかったけれど、迂闊な行動だったのかもしれないと後悔が押し寄せる。

(令華伯母様の要求に従うにしても、誰かついて来てもらえばよかったのかな)

 こんな後味が悪い気分になるなんて。

 落ち込んでいると、スマートフォンが鳴りだした。

 史輝からだ。

「はい」

「美紅、今大丈夫か?」

「はい。史輝くんは休憩中?」

「ああ。今日は取引先の海外拠点を視察することになってる。出発まで一時間あるからゆっくり話せる」

 史輝は今日も元気そうなのでほっとした。

 昨夜のディナーの話や、イギリスに来て知り合った陽気な現地職員の話などを聞き、十分ほど会話を楽しんでいると、史輝が急に静かになった。

「史輝くん?」

 一体どうしたのだろう。

「美紅、何かあったのか? 今日は元気がない気がする」

 史輝の鋭さにどきりとした。

 憂鬱な気持ちは出さないようにしていたのに、顔も見ていない状況で気付かれるなんて。

 それだけ美紅のことを考えてくれているということだろうか。
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