望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「……実は今日笛吹家を訪ねたの」

「どうして?」

 史輝は驚いたようだった。

「昨日の午後に令華伯母様から連絡があって、顔を見せに来なさいと言われて。嫁いでから三ヶ月経って里帰りしないのは常識がないと怒ってたの。不義理にしていたのはたしかだから、今日顔を出してきたんだけど」

 時差の関係で電話をするのがだいたいお昼くらいになるため、昨日の令華からの連絡はまだ話せていなかった。

 史輝にとっては初めて聞く話だ。一瞬沈黙が訪れる。

「都合がいいところだけ常識を持ち出すとはな。それで大丈夫だったのか?」

「用件は伊勢の別荘を譲って欲しいという話だったから、里帰りと言うのは口実だと思う」

 あの人たちが美紅の様子を気にする訳がないのだ。

「そんなことで……言いやすい美紅を狙ったんだな」


 史輝は呆れたような声を出す。

「分かった。その件は俺の方で対応しておく、他はないか?」

 続いた問いに、美紅は口ごもる。

(……言い辛い)

 かなりの憂鬱さに溜息を吐きそうになりながら、切り出した。
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