望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
体調を崩してから二日後。美紅は前々から予定していた前田家の次女の婚約祝いの会に出席した。
前田家の夫人とは、以前の交流会で同テーブルになり、友好的になれた相手だから、ぜひお祝いを伝えたい。
ただ二日前に笛吹家で倒れたばかりなので、念のために明日香に同行してもらうことにした。
「美紅さん、まだ体調が心配でしょう? 今日は欠席してもいいんじゃないですか? 前田家の方なら分かってくれますよ。あの家は史輝さんと親しいので気を悪くすることはないです」
「でも、この前とても親切にしてくれた人だから、お祝いをしたいと思って。顔を出したらすぐに帰るようにするから。付き合ってもらう明日香さんには申し訳ないんだけど」
「私のことはいいんですよ。ただ美紅さんのことが心配で……倒れるのはこれで二回目だし、早く検査をするべきです」
明日香が顔を曇らせる。
「今日帰って来たら先生に診てもらうことになってるから、大丈夫だよ」
「分かりました。でも様子がおかしいと感じたら、強引に連れ帰りますよ」
「うん。よろしくお願いします」
まるでお母さんのように厳しい口調で言う明日香に、美紅は微笑みながら頷いた。
「美紅さん、来てくれてありがとう」
「前田夫人、お嬢様のご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。娘は京極とは無関係の一般家庭の男性に嫁ぐのでこのようなささやかなお披露目になりましたが、どうかゆっくりして行ってくださいね」
「はい。お嬢様に直接お祝いを伝えたいのですが、今どちらに?」
「はい、向こうにいますよ」
前田夫人が示した先には、白いワンピース姿の美紅と同年代の女性がいた。
隣には優しそうな男性が寄り添っており、その隣に高校生くらいの女性がいる。
彼女は先日の交流会に母親に連れられてきていた女性だと気がついた。多分今日の主役の妹だ。