望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
(この前は全然話せなかったけど、今日は仲良くできるかな)

 明日香が言うには史輝が親しくしている家族だそうだから、美紅も良好な関係を築きたい。

 前田家の姉妹は、とても感じがよく美紅の祝福を喜んでくれた。

 挨拶を終えて、挨拶待ちの人たちの邪魔にならないように部屋の隅に移動する。

「前田家の令嬢は人間ができていますね、付き添いの私への態度でよく分かりました」

 明日香がそっと耳打ちした。

「うん。誰に対しても分け隔てなく接する人みたい。お姉さんは社交的で妹さんの方は人見知りだったね」

「美紅さんの分析、かなり当たってると思います。この家とはよい付き合いができそうですね」

「そうだね。帰ったら史輝くんに報告しようかな」

「それがいいです。ではそろそろ帰りましょうか。主催者への挨拶は済んだので、美紅さんは帰ってお医者様に診てもらわないと」

 明日香の言葉に、美紅は頷いた。先日倒れたことが嘘のように体調良好だけれど、用心した方がいいだろう。

「前田夫人に声をかけてくるね。突然帰ったら失礼になるから」

「そうですね」

 明日香と共に主役たちを見守るように壁際にいる前田夫人のところに移動しようとしたときだった。

「美紅!」

 突然甲高い声で美紅の名前が呼ばれた。

 驚いて声の方に目を遣ると、そこには華やかに着飾った百合華の姿があった。

 彼女も招待を受けて来ただろうに主役には目もくれずに真っ直ぐ美紅に近付いてくる。明日香が警戒したように、美紅の隣に立った。

 百合華が、美紅の目の前で立ち止まる。
< 155 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop