望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「百合華さん、何か御用ですか?」

「ええ」

 百合華は何か楽しいことでもあったかのように笑っているのに、美紅に対する敵意のようなものを感じる。

 明日香もそれに気付いたのか、険しい表情だ。

「今日は皆さんに知らせたいことがあって参りました!」

 美紅に含みを感じる視線を向けていた百合華が、突然くるりと振り返り、部屋にいる人全員に向けるように声を高くした。

 騒めきが広がるのと同時に、百合華が注目の的になる。

(一体、何をする気なの?)

 嫌な予感がこみ上げる。

「私はここにいる美紅が不倫している事実を掴みました。史輝さんと結婚しているのに、不倫だなんて……許されない行為です。どうしても見て見ぬふりができないと思い、勇気を持って告白しました!」

 話している内に興奮が高まったのか、最後は舞台俳優が演技をしているような大きな声での告白だった。

 それまでの和やかなお祝いムードが一変、部屋には騒めきと緊張が走る。

「不倫? 嘘でしょう?」

「でも彼女よりも百合華さんの方が信用できるわ」

 あちこちから、困惑と嫌悪を含んだ声が聞こえてくる。

 美紅は茫然としてしまい、百合華の背中を見つめることしかできない。

 百合華は再び美紅に向き合い、大きな目を楽し気にすっと細めた。
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