望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「大変なことになりましたね。すぐに対策しないと」

 車に乗ってから無言で何か考えこんでいた明日香が、しばらくすると口を開いた。

「対策? ……でも何をしても取り返しがつかない気がする。あの写真は鮮明だったし、大勢の人が見てしまったもの」

 ショックで頭が上手く回らない。

 仕組んでまで他人を陥れようとする悪意が、恐ろしい。

(百合華さんがこれほど酷いことをするなんて、思わなかった)

 これは今までの嫌がらせとは全く違う。

「冤罪なんですよね。だったら何か方法があるはず」

「でもあの写真は加工したものじゃないと思う。笛吹家で具合が悪くなって、少しの間眠ってしまっていたんだけど、目が覚めたときには服がはだけていたの。楽になるように緩めてくれたのかと思ったけど……」

 あれは不倫現場を演出するためのものだった。

 そんな陳腐な偽造なのに、写真は非常に上手く映っていた。

「あの男性は誰なんですか?」

「百合華さんの同僚だって言ってたわ」

「となると京極建設の社員ですよね。百合華さんに命令されたってこと?」

 明日香が不快そうに顔をしかめる。
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