望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「史輝くん、私、迷惑をかけてばかりでごめんなさい」

「謝らなくていい。どう考えても美紅のせいじゃないだろ? 悪いのは卑劣な真似をする百合華だ」

「でも、さっき怒ってたでしょ?」

 きつい言葉を言われた訳ではないが、雰囲気で感じるものだ。

「それは美紅に対してではなく、百合華と共犯の男への怒りだ。どういうつもりかは知らないが許しがたい」

 史輝は低い声を出した。自分に言われているのではないと分かっていても、すごみを感じて怖い。

「美紅、不安で心細いと思うが、もう少しだけ頑張ってくれ。なるべく早く帰るから」

「ありがとう。私、史輝くんが信じてくれたことが本当に嬉しい」

 彼は美紅を少しも疑ったりしなかった。そのことにどれほど救われたか。

「当たり前だろ? 俺たちは夫婦なんだから。なにがあっても俺は美紅を信じるし、味方でいる。だから元気を出してくれ」

 史輝の優しく愛情を感じる言葉で、傷ついていた心が癒され温かくなるようだ。

「私も史輝くんを信じてる。帰ってくるのを待ってるから」

「ああ」

 優しく穏やかなひと時に、安らぎを感じる。史輝も同じ気持ちでいるような気がした。

「他には変わったことはないか?」

「あ……」

「どうした?」

「あるんだけど、それは史輝くんが帰って来てから直接言いたいな」

「大丈夫なのか?」

 史輝が心配そうに言う。

「大丈夫。嬉しいことだから」

「そうか。聞くのが楽しみだ」

 電話ごしでもほっとしたような空気が伝わってくる。

「美紅は間違ったことはしてないんだ。それはいずれ証明されるから」

「そうだね。私は後ろめたいことなんてしていない。堂々としているね」

「その意気だ」

 史輝に励まして貰ったからか、心が強くなる気がした。

 かけた時の不安が嘘のように穏やかな気持ちで通話を終えたのだった。
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