望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
◇ ◇ ◇

 美紅との電話を終え、今後の動きを考えていると、ドアが開き宗吾が部屋に入ってきた。

 かなり慌てた様子で、史輝の下に駆けよってくる。

「史輝、大変だ!」

「どうしたんだ?」

「今、妹から連絡があって、美紅さんと百合華さんが揉めたって。美紅さんに不倫疑惑があるらしい!」

 宗吾は早口で言い終えると、史輝のはす向かいにあるオットマンに腰を下ろした。

「ああ、美紅から聞いた」

「美紅さんから? そうか……よかった」

 宗吾がほっとしたように胸をなでおろす。

「なにがだ?」

「史輝が想定の百倍は落ち着いていて。知ったら絶対に怒り狂うと思ってたから」

 すっかり安心したのか、宗吾は身軽に腰を上げ、室内にあるバーカウンターに向かう。

「史輝も何か飲むか?」

「ああ。コーヒーを頼む」

 宗吾は手早くふたり分のコーヒーを淹れて戻って来た。

「はい」

「悪い」

「それで史輝が落ち着いてるってことは、不倫疑惑はデマなんだろう?」

「当然だ」

 史輝は宗吾をじろりと見た。

 美紅がそんな真似をする訳がない。疑惑すら腹立たしいというのに。
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