望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「他の証拠は?」

 義父が調査員の男性に続きを促す。

「はい。ご結婚後についてですが、美紅様は自由時間がなくなったため、不貞行為を行ったのは問題の写真が撮られた際の一度だけだと考えられます」

「なるほど……」

 義父は何かを考えるように黙り込んだ。

(どうしよう……このままだと嘘が本当になってしまう)

 すぐに反論して無実を証明しなくては。ただいくら美紅が言っても信用してもらえない。

 自己申告ではなくてもっと客観的な証拠が必要なのだ。

 だからと言って、証拠なんてある訳がない。

 何もしていない証明をする方が遥かに難しいのだと気がついた。

「美紅、いい加減罪を認めなさい」

 令華が厳しい声をかけてくる。

「認めません。証言は真実じゃありません」

「本当に頑固ね……まあいいわ」

 令華は美紅に見切りを付けたように義父に視線を移す。

「お兄様、こうなった以上は史輝と美紅の結婚を終わらせるべきです」

「それは本人たちが決めることだ」

「いえ。年長者がしっかり導くべきです。だって本人たちに任せていたから、このようなだらしない女性を妻にしてしまったのでしょう?」

「……美紅さんはお前の姪ではないか」

 義父がぼそりと呟いたが、令華には届かなかったようだ。
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