望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「離婚後、史輝は百合華と結婚するべきです。従兄妹同士で結婚は望ましくないというのは分かるけれど、それは他の分家を気にしてのことでしょう? 実際は血の繋がりはないのだから、問題はありません。むしろ百合華を妻に迎えることで、本家の正当性が増すくらいだわ」

 令華は自分の意向が叶うと確信しているようだった。

 美紅はもちろん義父の言葉すら耳に入らないようで、高揚した表情をしている。

「伯父様。私も史輝さんと結婚したいです。私なら美紅と違って本家の夫人として立派に役立てます」

 百合華も令華と同様に、自分の言動が間違っているとは思いもしていない。

「美紅は史輝さんの妻としての役目を果たせていません。社交だってろくにできていないようで、本家の使用人からの評判も最悪なんです。証言してくれる人だってちゃんといます」

 百合華が得意気に言った。証言してくれる使用人とは、おそらく前々から美紅の様子を令華たちに伝えている者だろう。

(どうしよう、このままだと……)

 今のところ義父はどちらの味方もしていないが、令華の意見に賛同してもおかしくない状況だ。

(お義父様は令華伯母様に、かなり甘いそうだから)

「美紅さん」

 義父が美紅を見つめる。今どんな考えでいるのか表情からは読み取れない。

「証言が間違っていると言っていたが、京極の調査機関は優秀だ。この程度の問題で誤情報に惑わされるとは考えられない。だからもし美紅さんの主張が真実なのだとしたら、わざと嘘の情報を持ち帰ったことになる」

 義父の声音は厳しかった。

 美紅の反論は調査機関の人々の能力を否定し、不正を働く者がいると言っているも同然だからだ。

 その発言に責任が持てるのかと問われている。

 答え方によっては、誰かのキャリアを傷つけたり迷惑をかけることになるのかもしれない。
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