望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「父さん、俺の不在時に妻を詰問するとはどういうことですか?」

 史輝が義父に向ける目は、実の父親に対するものとは思えないほど冷ややかだった。

「史輝、突然割り込んで来て、その態度はなんですか?」

「令華さんは口を出さないでもらいたい」

 令華が史輝を窘めようとした。しかし史輝はこれまでにないほどのきつい口調で反論する。

 義父同様、令華にも強い怒りを持っているのは明らかだった。

 それに史輝は令華を叔母と呼ばなくなった。それは身内への親しみを捨て線を引く決意の表れのようだ。

「父さん、京極の調査機関の結果は無効です」

 その場にいる美紅以外が顔をしかめる。

「正当な理由があるのか?」

「もちろんです。宗吾、入ってくれ」

 史輝がドアの方に顔を向けながら呼びかけると、長身の若い男性が姿を現した。

(あ、あの人は……)

 史輝との結婚が決まった日に、彼と共に笛吹家を訪れた人物だ。

 今日も一緒にいるということは、信頼している相手なのだろう。

 史輝は宗吾からファイルを受け取ると、さっと中身を確認して義父に手渡した。

「これは?」

「中身を見たら今回の調査が不正だと分かるはずです」

「……」

 義父は訝し気な表情をしながらファイルを開く。そして次の瞬間目を見開いた。

「……なんてことだ」

「不正だと認めますか?」

 史輝の問いに、義父は頷いた。
< 179 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop