望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「相手は調査機関の人間だ。令華さんは調査担当者を懐柔して、結果を改ざんしたと思われる」

「そんな……」

 史輝の説明に、美紅は思わず開きかけた口を手で押さえる。

(そんなことができるものなの?)

 義父の話では非常に優秀で信頼できる組織ということだったのに。

 美紅を陥れるためだけにそこまでできるのだろうか。

「金か出世を餌にしたのか、脅したのか。どのような手段を用いたのかは不明だが、令華さんが調査に関わっていたのは変えようのない事実だ。あなたにはもうなんの信用もない」

 史輝がそう宣言すると、令華は真っ青な顔をして史輝を睨んだ。

「史輝、お前なんかにそんなことを言われる筋合いはないわ! 大人しくしていたら調子に乗って、勝手な結婚をして、よりによってあの女の娘を本家に入れるなんて!」

 令華がヒステリックに叫ぶ。その中に聞き捨てならない言葉があって、美紅は黙っていられずに声を上げた。

「あの女というのは私の母のことですよね?」

「ええ、そうよ! あなたの馬鹿な母親よ」

 顔をしかめる令華は、義父と史輝の前だと言うのに開き直ったのか美紅への憎しみを隠さなかった。

「そこまで母を嫌うなんて……」

(どうしてなの?)

 史輝から、令華と母の関係を少しだけ聞いている。

 笛吹家に嫁いだ令華が、口うるさく注意をする母を嫌ったとのことだが、結果として母が家を出て、令華が残った。

 傍から見ると令華の勝利だ。だって彼女の思い通りになっているのだから。

 でも、それから長い月日が経った今もまだ執拗に憎んでいるのは、不自然ではないだろうか。

 それに母が笛吹家に戻ろうとしたことにも違和感を覚え、前から気になっていた。
< 181 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop