望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~

「母娘揃ってどうしてこんなにイライラさせるの! 史輝とは引き離したはずだったのに結婚するなんて!」

「これ以上妻を侮辱するのは許さない」

 史輝が近付いて来て美紅を庇うように立った。

「史輝、そこを退きなさい!」

「退くのはあなたの方だ。今後一切美紅に近付かないでもらう」

「私に対してそんな態度を……」

「もうやめろ!」

 睨み合う史輝と令華に、義父が割り込んだ。

「……もういい加減にしてくれ」

 義父はうんざりしたように首を横に振る。

「お兄様……」

 その様子に令華は勢いを失ったが、史輝は義父を強い目で見返した。

「父さんの事なかれ主義によって苦しむ人がいると、まだ分からないんですか?」

 義父がはっとしたように史輝を見る。

「令華さんの横暴は許容範囲を超えています。父さんが負い目を感じているのは分かっているけれど、立場がある父さんが何も言わないことで被害を被っている人がいる……美紅も長い間、令華さんに虐げられてきたが、周りは見て見ぬふりをした。助けたくても、できなかったんだ。それは父さんにも原因がある」

 義父は僅かに動揺を見せた。史輝から美紅に視線を移すと、恐る恐るといったように問いかけてきた。

「史輝の言ったことは本当か? 虐げられていたというのか?」

「……はい。京極グループ、特に笛吹家では令華伯母様に逆らえる者はいませんでした……私の母も令華伯母様との関係が悪化して家を出た可能性があります」

 美紅がはっきりそう告げると、義父は深い溜息を吐いた。
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