望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「君が史輝を裏切るような人ではないと分かっていた。そして令華が望みを叶えるためなら何でもする人だと言うことも。ただ調査機関を買収するとまでは予想していなかったから、対応に迷っていた。そこに史輝が証拠を持って駆けつけたということだ。息子の方が余程優秀で、用心深い……予め令華の身辺を調査していただなんて」

「お兄様……今の話……私を疑っていたのですか?」

 令華が信じられないといったように呟く。相当ショックを受けているようで、真っ青だ。

 義父はそんな令華を痛ましげに見たあとに、頷いた。

「ああ」

「どうして?」

「これを見つけてしまったからだ」

 義父はスーツの内ポケットから何かを取り出した。

(手紙?)

「これは妻からの手紙だ」

 義母がびくりと体を震わせた。

「令華が隠していたのだろう?」

「母の手紙?」

 史輝も知らない話のようで、怪訝そうに眉を顰める。

「そうだ。ここには妻からの訴えが書いてある。病状が進行してから書いたものなんだろう。亡くなる前の最後の手紙だ」

「どうしてそれが令華さんのもとに?」

 史輝が動揺を露わにする。

「私に渡らないように隠していたのだろう。なぜ未だに処分していなかったのかは分からないが。ここには令華が私の妻と美紅さんの母君にした悪行について書かれていたよ。私に気を遣ってなかなか言えなかったようだが、史輝と美紅さんが心配だったのだろう。真実と共にふたりを頼むと書いてあった」

 美紅は初めて知る事実に息苦しさを感じていた。

(お母さんがなぜ家を出たのか、本当のことが分かるの?)

 義父が美紅に視線を合わせた。
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