望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「美紅さん、君の母君は令華のせいで実家を追い出されたんだよ」

 ずきりと胸が痛くなった。

 史輝が言っていた通りだったのだ。

「母は家を出てどこに行ったのでしょうか」

 それまで笛吹家の令嬢として何不自由なく暮らしていた母が、家を出てひとりで生活するのは、苦労が大きかったと思う。
 無事に美紅を産んだのが信じられないほどだ。

「彼女は笛吹家を出ると、幼馴染を頼ったそうだ。その幼馴染は元は京極の分家であった結城家の親族だった。結城家を継ぐ者がいなかったため途絶えたが、親族が何人かいて、グループ外の会社で働き生活していた」

「……もしかしてその人が私の父ですか?」

 ドキドキと心臓が脈打つ。緊張でいっぱいになりながら義父の答えを待った。

「そうだ。君の母君と一緒に暮らしているうちに、幼馴染から恋人になったのだろう。ただ、不幸なことに事故で亡くなった」

「え……」

(せっかくお父さんが分かったのに、亡くなってるの?)

 母だけでなく父までも事故で亡くなっていたなんて。ショックのあまり目の前がくらりとする。

「美紅!」

 史輝が慌てて美紅の体を支えてくれたから倒れずに済んだが、ショックは拭えない。

「父さん、美紅の父親は本当に事故に遭ったんですか?」

「そうだ。だが事故に令華が関わっている」

「令華伯母様が?」

 信じられない思いで令華を見る。義父の言葉が真実だからか、彼女は血の気が引いた顔で茫然としていた。
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