望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「そうなんだ。よかったね」
「うん。それにしきくんとも会えてよかった!」
史輝のような綺麗な男の子を見るのは初めてだった。まるでこの前母が読んでくれた物語に出てくる王子様のようだと思う。
「しき君のお家はすごく大きくて、鳥もいて、お城みたいだね!」
美紅がそう言うと、史輝がきょとんと目を丸くしてから噴き出した。
「お城じゃないよ」
「そうなの?」
「そう。だからこれからも気軽に遊びに来てね」
「ほんとうに? うん、またくるね」
それが美紅と史輝と初めて会ったときの出来事だった。
保育園や近所の友達とも違う、新しい友達。
信じられないくらい綺麗で優しくて、美紅はあっと言う間に史輝が大好きになって、帰り道は母と史輝の話を沢山した。
「しきくんが鳥をみせてくれたの。たのしかったよ!」
「よかったわね」
「うん! しきくんとまた会いたいな。いっしょに鳥をみるの」
「そう……本当に仲良くなったのね」
少し困ったように微笑んだ母の顔が、なぜか美紅の記憶に深く残った。