望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚～財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない～

その後も母に連れられて、ふた月に一度くらい史輝の家を訪ねた。

史輝と彼の母は変わらずに優しく美紅を歓迎してくれた。

美紅にとっては、待ち遠しくなる楽しいひととき。
　
けれど、史輝と初めて会ってから、五年が経ち美紅の母親が事故で亡くなったことがきっかけとなって、全てがガラリと変わってしまった。

美紅は、母の兄に引き取られたが、新しい家族はとても冷ややかだった。

史輝の家に遊びに行く機会も減ったため、少しずつ彼と疎遠になっていき、　気付けば避けられるようになっていた。

ショックだったけれど、その頃になると、誰に言われるまでもなく、彼と自分の立場の違いを理解するようになっていた。

名門一族の跡継ぎである史輝に対して、母を亡くし親族の間で厄介者扱いをされている美紅。

生活環境が違い過ぎていて、関わる機会すらなく幼い頃のまま友達でいられるわけがなかった。

とても悲しいけれど、仕方がない。


美紅の初恋は、想いを伝えることもできないまま、ひっそりと終わったのだった――。