望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
苦しさがこみ上げて、ぎゅっと目を瞑った。

すると史輝が疲れたような溜息を吐いたのが分かり、美紅は体を強張らせた。

(ああ……きっと面倒だと思われたんだ)

そう分かっていても上手く取り繕えない。自分という存在が彼に迷惑をかけていると思うと、ますます心が沈んでしまうのだ。

しばらくすると、史輝が口を開いた。

「俺の心情を君が慮る必要はない。君はただ俺の妻として相応しい振舞いをするように努力してくれ。それとも俺との結婚は気が進まないのか?」

「えっ? いえ、そんな……」

(そんなことがあるわけない)

過去に大好きで唯一の存在だった人。疎遠になり、立場の違いを理解してからも、密かに想い続けていた。

ただ彼を大切に想うからこそ、不幸になってほしくないのだ。

「本心を言っていい。どんな答えでも悪くはしないと約束する」

史輝が真剣な眼差しを美紅に向ける。

彼は本気で美紅の意志を聞いてくれているのだと分かった。

京極家の中で誰よりも高い地位にある彼が、多くの人に無視されていた美紅にも真摯に向き合ってくれている。

それなら美紅も誠実に答えなければ。
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