望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
せっかく彼の態度が少しだけだけど、軟化したように感じていたのに。

「これからは、昔のように呼んでくれ」

「……え?」

美紅は思わず目を見開いた。

先程から予想外のことばかり言われて、なかなか平静に戻れない。

「そ、そんなことは無理です……失礼になりますし」

京極一族の人間は皆彼に対して尊敬の念を込めて“史輝様”と呼んでいて、例外は伯母と百合華だけ。許されているのは史輝の近い親族にあたるからだ。

彼女達はそれを誇りに思っているようだった。

(私なんかが史輝様を呼び捨てたら、絶対に激怒する)

特に百合華は、子供の頃から美紅が史輝と親しくするのを嫌っていた。

史輝に近付くなと直接言われたことが何度もある。テニスラケットを隠されたのだって、史輝からのプレゼントされたのが許せなかったからだろう。

しかし史輝は、そんなことは気にも留めていないようだ。

「君は俺の妻になるのに失礼な訳がないだろう?」

「でも……」

 周りは決して認めていない。
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