望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「さっき自分の立場を理解していると言っていたな。ならばこれからは俺の妻として自分を変えていけ。誰かに見下されたり、理不尽なことを言われたら、我慢するな。もう無理に気持ちを抑えなくていい」

「……自分を変える?」

「そうだ。俺は妻に自分自身を卑下するような人間であって欲しくない」

彼の言葉が胸に突き刺さる。その通りだと思ったからだ。

これまでの美紅は、笛吹家の人たちからどんなに屈辱的な扱いをされても、何も言いかえさず卑屈に愛想笑いを浮かべることすらあった。

もちろんはじめはそんな理不尽な状況は納得できず、反抗していた。けれどいつの間にか反抗するのをやめた。

言うことを聞いていれば罰は受けないし、傷つかなくてすむ。何を言われても気にせず、深く考えない方が楽だった。

平穏に暮らすために、気付かないうちに自尊心を捨てていたのだ。 

自分を持っていない臆病者。それが美紅だ。

でも史輝はそんな妻では嫌だという。

(やっぱり私では彼に相応しくなかった……でも今からでも変わらなくちゃ)

他の誰でもなく彼がそう願っているのだから。
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