望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
食後は、場所を移し男女別れての談笑の時間になった。
これは長く続く京極家の習慣で、交流を持つことで一族の結束を高める目的があるそうだ。
本来は本家の女主人が中心となって、和やかに会話をするのだろうが、美紅にそんな求心力はないから、代わりに伯母と百合華が中心となって話題に花を咲かせている。
美紅は端の席で居たたまれなさを感じながら、その様子を眺めていた。
(どうしよう。皆さんにお披露目に来てくださったお礼を言わなくちゃいけないのに)
誰ひとりとして美紅に視線を向けることないから、なかなかきかっけが掴めない。
もし史輝の母か美紅の母が健在だったら、この場に馴染めるように導いてくれたのだろう。
けれど、現実は頼る人などいない。なんとか自分で輪に入っていくしかない。
胃がきりりと痛むほど緊張するけれど、史輝の妻に相応しくなると決めたのだ。
(頑張って変わらなくちゃ)
「あ、あの……」
勇気を出して声をかけると、楽し気な話声がぴたりと止まった。
じろりと値踏みするような視線が集まる。