望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
美紅は震えそうになる手をぎゅっと握りしめて、口を開いた。
「本日は悪天候にも関わらず、私たちの結婚披露にご足労くださり、ありがとうございました。心から感謝しております。これからも……」
「私たちの?」
美紅の言葉を、令華の険のある声が遮った。
「は、はい。あの……なにか問題があったでしょうか?」
令華が気分を害しているのは伝わってくる。もしかしたら、食事の席でのミスについてまだ怒りが収まらないのだろうか。
「はあ……勘違いしているみたいだけど、私は“あなたたち”を祝福している訳じゃないの。兄と甥の顔を立てるために来てあげたのよ。はっきり言っておくけど、ここにあなたを本家の妻と認めている者なんていないわ」
ドクンと心臓が跳ねた。
(こんな……みんなが見ている前なのに、はっきり否定するなんて)
自分が認められていないことくらい分かっている。
それでも史輝の妻になることは決定事項で覆られないのだから、美紅を嫌っている笛吹家の人々だって表向きは普通に接してくれると思っていたのだ。