望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
体を固くする美紅を、史輝が心配そうに見つめる。

「は、はい……少しだけ」

答えた途端に、落ち込んだ。

(またどもってしまったし、嘘まで言ってしまった)

少しだけではなく、死ぬほど緊張しているというのに。

「……何か飲もうか」

史輝が部屋に用意されていたワインを、グラスに注いでくれた。

透明のグラスにややゴールドを帯びた白い液体が注がれる。

一口呑むと、喉を濃度の高いアルコールが通っていくのを感じた。

そう言えば、祝宴の後何も飲んでいなかった。思っていたよりも体が渇いていたようだ。

史輝が何か話しかけている。けれど緊張のあまり内容が頭に入って来ない。

現実感がないというか、深く考えることが難しくなっている。

気づけば、ベッドに押し倒されていた。

「あ、史輝くん……んっ」

彼の大きな体に覆いかぶさられ、唇を塞がれると、冷静な思考が保てなくなった。

どうかしてしまいそうなほど心臓が大きな音を立て、触れられるとびくりと体が震えてしまう。

(どうしよう、怖い……)

心の準備なんてできていなかった。

するするとガウンが肩から降りて、美紅の素肌が露わになる。

恥ずかしくてぎゅっと目を閉じた。
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