望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
この状況で数日距離が空くのは辛い。でもその不安を彼に伝えるのは憚られる。

昨夜、拒否するような態度を取ったのは美紅の方。それなのに今更側にいて欲しいとは言い出すのは身勝手だ。

夫婦といっても、我儘を言って甘えられるような関係ではないのだから。

「いってらっしゃいませ」

史輝が出て行くのを大人しく見送るしかなかった。



いつまでも落ち込んではいる訳にはいかないので、身支度をしてダイニングルームに向かった。

義父と史輝は朝食を取らずに出社したとのことで不在だったが、その代わりに令華と百合華のふたりが席についていてた。

昨夜は帰宅せずに客室に泊まっていったのだろうが、ふたりがいることは聞いていなかったため、動揺してしまう。

「お、おはようございます」

「結婚初日から寝坊だなんて、だらしないわね」

「申し訳ありません」

令華の嫌味に息苦しくなるのを感じながら、席に着いた。

気まずい空気が漂う中、食事をはじめる。

会話がない為、カチャカチャとカトラリーが立てる音が気になってしまう。

ただ令華と百合華はふたりで楽しそうに会話をしていて、美紅に話を振る気はなさそうなのが、幸いだった。
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