望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
ところが、食事を終えた直後に、百合華が含み笑いの表情で声をかけてきた。

「美紅、私面白いこと聞いちゃったんだけど」

「面白い?」

一体何の話だろうか。分からないけれど、百合華がこんな顔をするときは、決まって嫌なことを言われるときだ。

警戒していると、百合華が我慢できないというように声を立てて笑い出した。

「早速、史輝さんに嫌われたんだってね。まさか昨日の今日で愛想をつかされるとは思わなかったから驚いたわ」

百合華が上機嫌に言い終えると、令華がつられて笑い出す。

「あ、あの……」

何がそんなにおかしいのか分からず戸惑う美紅に、百合華が笑いを止め、憐れむような目をした。

「初夜が上手くいかなかったんでしょ? 残念だったわね」

「えっ……どうして」

なぜ百合華が夫婦のデリケートな話を知っているのだろう。

(まさか彼が言ったの? いえそんなはずは……)

「どうしてかは関係ないでしょう? その様子だと事実みたいだし」

百合華が責め立ててくるので、考える暇がないが、とにかく冷静にならなくては。

本当は何も知らないけれど、かまをかけてきている可能性だってあるのだから。
< 65 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop