望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「やっぱり史輝はあなたでは満足できないんでしょうね」

令華までが百合華に賛同して美紅を責めはじめた。

「せっかく結婚したのに愛されていないなんて可哀想。史輝お従兄さまに捨てられるのも時間の問題かもね」

令華と百合華は言いたいことを言って満足したのか、美紅に蔑みの視線を送り食堂を出て行った。

嵐のようだった時間が終わり静かになると、美紅は深い溜息を吐いた。

(気にしないようにしなくちゃ……ふたりに嫌味を言われるのなんて、いつものことだもの)

けれど、胸を刺す痛みを感じないようにするのは無理だ。

頭で分かっていても、心がついていかない。

初夜なのに史輝が美紅を抱かなかったのは真実なのだから。それにしても。

(百合華さんはどうやって知ったのかな?)

事実を知っているのは、美紅以外には史輝だけ。でも彼は夫婦関係について無神経にペラペラ話す人だとは思えない。

ならば、深夜勤務中だった使用人の誰かだろうか。

もしかしたら、史輝が美紅の部屋を出たところを目撃したのかもしれない。

そうだとしたら、その使用人は伯母たちに近い立場で、美紅にとって厄介な相手というころだ。

美紅は憂鬱な気持ちで席を立った。
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