望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
ダイニングルームから私室に戻る途中、明日香とすれ違った。
彼女は美紅の顔を見ると、さっと顔色を変えて近づいてきた。
「美紅様、どうしたんですか?」
「……ええと、なにが?」
明日香の剣幕に美紅は戸惑ってしまう。
「顔色が、ものすごく優れません! もしかしてどこかが痛みますか?」
「い、いえ、そうじゃないんだけど……とりあえず部屋に」
ここでは誰に聞かれるか分からない。伯母たちの情報源が誰か分からないので、警戒してしまうのだ。
明日香を連れて私室に入りドアを閉めてようやく安心できた。
「美紅様、座ってください。貧血かもしれないので、倒れたら大変です」
「病気じゃないから大丈夫。あの、明日香さんも座ってください」
「はい」
明日香は躊躇わず美紅の隣に腰かけた。
使用人としてはよくない態度かもしれないが、美紅のことを心配して親身になってくれているのが伝わってくる。
直感だが、明日香は信用できると思った。
「……実は朝食の席で、令華伯母様たちから責められてしまったんです」
「えっ? どのようなことを言われたんですか?」
「私と夫が不仲だって」