望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
三章 妻の境遇 史輝side
京極銀行本店の役員室にノックの音が響いた。
ちょうどスーツの上着を脱いでいた史輝は、視線をゆっくりドアに向ける。
「あ、着替え中だったか?」
ドアを開けて入って来たのは、史輝の秘書を務める前田宗吾(まえだそうご)だった。
彼は京極一族である前田家の次男だ。
史輝とは同じ年の為、幼い頃から交流がありプライベートでは親友と言っていい存在だからお互い遠慮がない。
「いや。どうしたんだ?」
「午後の会議の議題が増えた。時間がないからランチミーティングにしようと思って」
宗吾の手には手提袋があった。都内のいたるところで見かける、コーヒーショップのロゴが入っている。宗吾が適当に買いに行ったのだろう。
「追加された議題は?」
史輝は応接セットのソファい座ると、宗吾から手渡された手提げ袋から、サンドイッチとホットコーヒーを取り出した。
「つい先ほど京極建設から融資の増額依頼があったんだ。その承認について」