望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
宗吾も史輝の前に座り、ガサゴソと袋を開ける。

「建設は経営不振が続いているが、大した条件を付けずに承認が降りるだろうな」

「間違いなく。役員連中は忖度が過ぎる」

宗吾がうんざりしたように肩をすくめた。

京極建設は、本家の令嬢だった令華が嫁いだ笛吹家が代表取締役を務める会社だ。

もともとグループ内での序列が高く、強い発言権を持っている家だが、令華が当主夫人になってからというもの、ますます力が大きくなった。

史輝から見ても厄介な存在だと言えるが、一番問題なのは嫁いでから何十年が経った今も、令華が本家に口出し出来る程強い権力を握っていることだ。

史輝の父であるグループ総帥が、令華の行動に口出しをしないから、令華に忖度する者も多く、彼女がますます付けあがる原因になっている。

「このままじゃ、建設も終わりかもね」

宗吾がさらりと演技でもないことを言う。

「だからなんとかする為に動いている」

史輝は京極建設の社長を挿げ替えようと考えている。笛吹家には企業運営の能力がないのだから、当然のことだ。

問題は、令華の味方をするだろう父と役員をどう説得するかだ。
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