望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
それは史輝も分かっている。今日融資を申し込んできたのは、史輝と姻戚関係になり、遠慮がなくなったというのもあるだろう。

「史輝は完璧な実績を築いてきたけど、結婚だけは正しくなかったよ」

「宗吾、それは……」

史輝は宗吾を睨みつけた。しかし彼は怯まない。

「口出しするなって言うんだろ? でも黙っていられない。史輝がこれまで笛吹夫人の横暴に我慢して必死に努力してきたのは、京極グループを変えるためじゃないのか?」

「そうだ」

宗吾の言う通りだった。戦後の財閥解体で一度は力を失った京極家はその後長く続いた苦境を乗り越えて、再び京極グループとして日本の経済産業界でさ不動の地位を築いた。

他の財閥家が衰退して行く中で、復活が叶ったのは、一族が団結していたからだと言われている。

だから京極家は枝分かれしていった分家との絆を大切にして、後継ぎの妻は分家から選ぶことを慣例としている。

しかし史輝は、一族の人間ばかりが権力を握る今の体勢に危機感を抱いている。

もっと柔軟に、能力のある者は出自に関わらず重要なポジションを与えるべきだ。

伝統と改革は両立できるはず。
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