望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
彼女が心配だったから、励ましたかった。力を付けて帰国して美紅を守ると約束しようと思っていた。

けれど久しぶりに間近で美紅を見たとき、言葉が出てこなかった。

明るく元気だった美紅が、今にも消えてしまいそうな儚い笑みを浮かべていたから。

元気で朗らかな妹のようだった女の子はもういない。変わってしまった。

心臓がドクドクと嫌な音を立てた。

笛吹家で冷遇されているのは知っていたけれど、本当の意味で分かっていなかったのだと、このとき痛感したのだ。

明るさや未来への希望、きっと美紅はそういったもの失ってしまっていたのだろう。

何もかも諦めてしまったような脆さがそこにはあった。

ここまで放っておいたことを激しく後悔した。

それなのに美紅は史輝に対する感謝の気持を口にして、留学を激励してくれた。

辛い中にあっても、史輝を想ってくれていたのだ。

そのとき史輝の中で、美紅への想いが変化した。

彼女を守りたいと思う。でもそれは妹としてではなくひとりの女性として。

その場で気持ちを伝えることは出来なかったけれど、決意した。
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