望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
四章 幸せな夜
結婚披露の祝宴から五日が経った。
多忙な史輝とはゆっくり話す機会が持てず、あまり夫婦になった実感が持てないまま不安を感じていた。
待つだけではなく、自分から何か行動を起こした方がいいのではないか。そんなふうに悩む日々。
ところが今夜、少し早めに帰宅した史輝が美紅の部屋を訪れ、思いがけないことを言った。
「明日は早く仕事が終わる予定だ。ふたりで出かけないか?」
「え……ふたりで、外出するんですか?」
仕事が落ち着いたら、一度ゆっくり話したいと思っていたけれど、彼の方から誘ってくれるなんて。
「美紅の都合が悪くなければ」
「わ、私の都合は悪くありません! 大丈夫です!」
無理なら止めておこう、とあっさり言われそうな気がしたので、慌てて返事をする。
「そうか。どこか行きたいところはあるか?」
「いえ、史輝くんが行きたいところにしましょう」
美紅はこれまで遊びに行く機会が殆どなかった為、どこに行きたいか聞かれても思いつかない。
史輝に任せた方がいいだろう。
「分かった。美紅が楽しめるところを考えておく」
史輝が柔らかく微笑んだ。
「……ありがとうございます」
美紅はドキドキと胸が高鳴るのを抑えられず、胸に手を当てた。
(史輝くんから誘ってくれるなんて嘘みたい。優しい顔をしているし、この前のことは怒ってないのかな?)
初夜で失礼な態度を取ってしまった美紅を許し、夫婦仲をよくしようと考えてくれているのだろうか。
「明日、場所と時間を決めたら連絡する。車を手配しておくから準備をしておいてくれ」
「はい。あの……楽しみにしています」
「ああ」