望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「それならよかった」

「私、屋形船に乗るのは初めてなのでうれしいです」

いつだったか、笛吹家で働く人たちが屋形船で忘年会を開催したと言っていた。

美紅は笛吹家において微妙な立場であるため呼ばれなかったが、皆が楽しそうに話しながら写真を見ているのを眺めて、羨ましいと思ったのをよく覚えている。

まさか史輝と一緒に乗ることになるとは思わなかったけれど。

史輝に手を引かれて大きな橋を渡ると、目の前に船が停まっていた。

「あの船に乗るんですか?」

「ああ、そうだ。貸し切りだからリラックスできる」

「貸し切り?」

笛吹家の使用人が見せてくれた写真では、お座敷のようなところに、長い机が置かれていて、そこに皆が並んで座っていた。

(ふたりなのに、あの広い部屋を貸し切ったの?)

なんて贅沢なんだろう。でも京極本家の人間ならそれくらい当然なのだろうか。

「美紅、足元に気を付けろ」

船に乗るとき史輝が美紅の体を支えてくれた。

美紅の背中を史輝の大きな手が支えている。

「あ、ありがとうございます」
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