望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
この部屋だけを見たら豪邸の中のリビングルームのようで、とても館船の中にいるとは思えない。

(思っていた屋形船と全然違う!)

屋形船という名称も、この船のイメージには合わない。豪華クルーズの旅とでも言われた方が納得できる。

美紅がキョロキョロ周囲を観察していると、料理が運ばれてきた。

懐石料理のようで先付から焼き物が次々とテーブルに並べられていく。

どれも出来立てで温かく、とても美味しい。

「すごく美味しいです」

今夜は史輝とふたりきりで、美紅のあら捜しをするような人がいないのも、安心できていい。

料理を味わっていると、いつの間にか日が落ち窓の向こうには夜の闇が広がっていた。

船がゆっくり進んでいるようで、遠くの華やかな灯りに徐々に近づいていっている。

「綺麗……」

ライトアップされた大橋は美しく壮大だ。美紅は思わず溜息をついた。

そんな美紅に史輝が優しい眼差しを向ける。

「気に入ったか?」

「はい。とても……一度綺麗な夜景を眺めたいと思ってんたんです」

他にもやりたいことや見てみたいものは沢山あった。けれどいつか、伯父にお金を全て返して自由になるまでは我慢だと自分に言い聞かせていた。
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