望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「ありがとうございます。皆さんに迷惑をかけてないか不安でしたけど、史輝くんにそう言って貰えると気が楽になります」

微笑んでそう言うと、史輝の表情に影が差した。

「前も言ったがあまり自分を過小評価するな。それに俺に気を遣い過ぎだ。呼び方こそ直ったが、他人行儀な話し方なのは変らない」

「それは……直そうとは思ってるんですけど」

まだ実際は令華と百合華の前に出ると萎縮してしまうし、史輝に対しても慣れなれしくなり過ぎないようにと、線を引いてしまっている。

「自信を持つのは大変です」

しゅんとして言うと、史輝がしまったとでもいうように顔色を変えた。

「すまない……急かすようなことを言って悪かった」

「いえ、史輝くんの言う通りなので」

「いや、美紅の立場で考えられていなかった。十年以上交流がなかったのに、夫婦になったからと言って、心を許せる訳がないな。俺にとって美紅は昔から変わらず身近な存在で、踏み込みすぎて美紅にとっては違うのだから」

「え?」

思いがけない史輝の言葉に驚き美紅は目を丸くした。

(私が史輝くんの身近な存在?)
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